「日本」とはなにか
文明の時間と文化の時間

米山俊直(京都大学名誉教授)著

ジャンル[文化人類学・地域社会学・比較文明論]
2007年4月10日発行
四六判上製・288頁
定価:2,500円+税
ISBN 978-4-903174-11-2 C1039

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美しいまち・美しいむら
「小盆地宇宙」のかたち
日本とはどんな国なのか。
日本の尺度で、日本を考える!
米山俊直の最終講義/遺稿集

米山俊直の「知」の遺産
末原達郎(京都大学大学院農学研究科教授)

 米山俊直先生(以下米山と略す)は、日本社会を世界文明の中に位置づけ、現代日本を歴史の中に位置づけることに情熱を傾けられた。米山の視点は、歴史と空間に対して、常にバランスよく目配りされている。しかし、その背後には、実際のフィールドワークの経験にもとづいた、確固とした信念がかいま見える。文章表現は緩やかであり、時として気づかずに読みすごしかねないが、述べられている内容には時に強い意志が隠されており、また独特の価値観が含まれていることに気づくことができる。米山は日本文明、日本社会を見るときに、どのような視線をもっていたのだろうか。私には、米山が二一世紀の日本を文明史の中で位置づける場合、三つの基線があったように思える。第一は、都市と農村を結ぶ基線。第二は、東日本と西日本を結ぶ基線。第三は、自然環境と社会・文化環境を結ぶ基線である。(中略)多様な人々の多様な社会の中で、日本文明や日本文化を位置づけなおすことによって、今までには見えなかった世界や文明観が現れてくるのではないか。米山が遺した最後の知的フレームワークは、ふたたび日本文明と日本文化の位置づけに関する新しい知のぶどう酒が注がれることを、ゆっくりと準備しているのである。(本書解題より)

目次

「はしがき」に代えて──新しい知の枠組みをもとめて
  松田素二(京都大学大学院文学研究科教授・社会人間学)

序章 都市列島日本──未来に向かって
第一章 稲のはなしから
第二章 海から見た日本列島
第三章 文明の補助線──縄文時代を考える
第四章 京都文化──文明中心のひとつとして
第五章 複雑系としての祇園祭
第六章 日本文明の基礎にある江戸・東京文化
第七章 「小盆地宇宙」再考
終章 日本文化と日本文明
解題 米山俊直の「知」の遺産──二一世紀日本社会と都市列島日本論──末原達郎
付論 最終講義「小盆地宇宙論その後──なら学との関連で」

あとがき 末原達郎・松田素二

米山俊直(よねやま・としなお)

1930(昭和5)年奈良県に生まれる。1945年、三重大学農学部卒業。1956年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、米国・イリノイ大学社会人類学部大学院研究助手として文化変化の通文化的比較研究に参加し、文化人類学を学ぶ。京都大学農学部助手、甲南大学文学部助教授を経て、京都大学教授、放送大学教授、大手前大学学長を歴任。京都大学名誉教授。2006年3月9日死去。
著書 『北上の文化──新・遠野物語』(共著)『集団の生態』『日本のむらの百年』『偏見の構造』(共著)『文化人類学の考え方』『過疎社会』『アメリカ人を考える』『月の山のかなた』(翻訳)『文化の型』(翻訳)『祇園祭──都市人類学ことはじめ』『日本人の仲間意識』『生活学ことはじめ』(共著)『柳田国男の世界』(共編)『ザイール・ノート』『天神祭──大阪の祭礼』『同時代の人類学』『新・アフリカ学』『アフリカ学への招待』『ドキュメント祇園祭』(編著)『都市と祭りの人類学』『小盆地宇宙と日本文化』『アフリカ農耕民の世界観』『日本人ことはじめ物語』『いま、なぜ文化を問うのか』『クニオとクマグス』『私の比較文明論』『米山俊直の仕事──人、ひとにあう。』(人文書館刊)など。
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