ゆうなの花の季と

伊波敏男(信州沖縄塾塾長・作家)著

ジャンル[社会福祉問題]
2007年5月10日発行
四六判上製・308頁
定価:2,600円+税
ISBN 978-4-903174-12-9 C0036

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生命の花、勇気の花
流された涙の彼方に。
その花筐(はながたみ)の内の
一輪一弁にたくわえる人生の無念。
沈黙の果てに吐き出す小さき者の声。
偏見と差別は、人間としての尊厳を奪い去る。
苦悩を生きる人びとが救われるのは、いつの日か。
幽(かそ)けき此の人生/感動のヒューマン・ドキュメント!

生命の歓喜を謳いあげるために

 国家と社会というものは、こんなにも簡単に人間の「尊厳」をはぎ取ってしまう。取り返しのつかない時間。すくえないほどの涙が流され、やっと「人権」の尺度で、ハンセン病に痛めつけられた人たちの「尊厳」が回復されはじめている。この国の未来に、ふたたび、人間の尊厳に棘を刺させないためにも「ハンセン病問題」を、時間の中で風化させてはならない。何よりも、わたしたち以外の誰にも、もうこのような苦しみをくぐらしてはならない。
 「人間としての尊厳を打ち砕かれ、この病気を背負った不運を嘆き続けた人たちと家族よ。この国の民として生きることが今日から始まる。さあ視線を落とさず胸を張ろう!」。(本文より)

本書の元本は1999年、『夏椿、そして』と題して、日本放送出版協会(NHK出版)より刊行されたが、後に版元品切れ(重版の予定なし)となっていた。著者の元に寄せられた、新版希望の多くの声や、ハンセン病市民学会設立など、ハンセン病問題の検証と偏見・差別の解消を図るための施策が求められている今日的情況・諸事情を勘案して、新たな装本として、書名を改めて、小社より刊行することとなった。
「ハンセン病問題」を風化させないことと人間の尊厳の回復という重い課題に応えるために、底本の大幅な補加筆・改稿を行ない、さらに新稿を加えて、編集を一新した。ハンセン病元患者の“人間回復”と“社会復帰”問題を考えるにあたって、本書が、その起点となることを願っている。(人文書館編集部)

目次

時の中に埋もれて──はじめに

ゆうなの花
  一日花  花人逢にて  伊野波節
指文字
  雨宿り  過去を継ぐ島  泣きぼくろ  門中の血  指文字
交差路
  島の遠景  森の住人
埋もれ火
  文箱の中  対岸の時  ふたたびの
往路のない地図
  無念の風景  無言の闇  五つの棺桶  黒い案山子
散らない花弁
  旅の終わり  風のない谷  夏椿
春を紡ぐ繭
  父親の冠  半夏生
にんげんの連
  にんげんの連

尊厳の棘──あとがきにかえて

伊波敏男(いは・としお)

1943(昭和18)年沖縄県生まれ。14歳からハンセン病療養所で生活を始め、沖縄、鹿児島、岡山の療養所での治療を経て全快。その後、東京の中央労働学院で学び、1969年、社会福祉法人東京コロニーに入所。1993年より約3年間、社会福祉法人東京コロニーおよび社団法人ゼンコロ常務理事をつとめる。
1997(平成9)年、自らの半生の記『花に逢はん』を出版、同年12月、第18回沖縄タイムス出版文化賞を受賞。ついで、『夏椿、そして』を著し、ハンセン病文学を問い続ける。作家。2004(平成16)年より、信州沖縄塾を主宰し、塾長となる。
以降、沖縄の近現代史を基礎から学ぶ特別講座を開講している。2007年企画『小さいものの視座〜信州から見た「沖縄」「アイヌ」を考える』(信州沖縄塾と小宮山量平のエディターズミュージアム[共催])
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