花に逢はん[改訂新版]

伊波敏男(作家・人権教育研究家)著

ジャンル[社会・福祉・文学]
2007年9月25日発行
四六判上製・376頁
定価:2,800円+税
ISBN 978-4-903174-13-6 C0095

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人間の尊厳をもって、生きるということ。
強靭な意志を持ち、人びとに支えられ、
社会の重い扉を開いていった苦闘の日々──。
ハンセン病という嵐に翻弄されながらも、
確かに生きた半生を静かに紡ぎ出す。
ハンセン病回復者が描く感動の社会文学!!

哀しみの光景と希望の道と

 著者がハンセン病に感染したのは、戦禍の中、家族とともに逃避行を続けた、デイゴの花咲く沖縄であった。九歳頃に発病し、次第に自覚してゆく苦痛を、毎日の高価な投薬で堪えていた。中学校の定期検診を機に、療養所生活が始まる。校庭の片隅で焼き払われた自分の机と椅子、家族との離別、親戚縁者に累が及ばないようにと与えられた“関口進”という新しい名前──。これからの自分を考え、底知れない不安感に襲われる日々の始まりだった。だが、道は少しずつ切り拓かれていった。中学までしか学べない沖縄の療養所を出て、高校のある本土へ行く夢。そして、東京での自活生活。ゆくさきは峻厳な道ばかりであり、何度もひるんでは後退したが、固い意志をもって貫き通すのだった。ただ口を閉じ、身を潜め、時間の経過に身を委ねているだけでは、社会的弱者はいつまでも生きられない。この許せない壁に、かならず風穴を開けてやる!
 これは、信念をもって差別や偏見と闘い、過酷な病気の障壁と無慙な運命を打ち破ったハンセン病回復者の、自らの半生を綴った感動の記録である。私たちの隣人として、共に過去を克服し、共に今を生きることへの人間の絆の尊さと愛の人間讃歌が、ここにある。

目次

改訂新版 はじめに

一列縦隊/屋我地島/紅樹/ニングヮチカジマーイ(春の嵐)
姶良野/瀬戸内海/烙印/人間の虹
砂の家/地下茎/かぎやで風

付論 ダミアンの沈黙/記録

[解説]生きることの原点──イナブスモーの記憶から  大城貞俊(詩人・作家)

「隣人」に出逢う──刊行に寄せて  畑谷史代(信濃毎日新聞社文化部記者)

改訂新版 あとがき

伊波敏男(いは・としお)

1943(昭和18)年沖縄県生まれ。14歳からハンセン病療養所で生活を始め、沖縄、鹿児島、岡山の療養所での治療を経て全快。その後、東京の中央労働学院で学び、1969年、社会福祉法人東京コロニーに入所。1993年より約3年間、社会福祉法人東京コロニーおよび社団法人ゼンコロ常務理事をつとめる。
1997(平成9)年、自らの半生の記『花に逢はん』を出版、同年12月、第18回沖縄タイムス出版文化賞を受賞。ついで、『夏椿、そして』を著し、ハンセン病文学を問い続ける。2004(平成16)年より、信州沖縄塾を主宰し、塾長となる。以降、沖縄の近現代史を基礎から学ぶ特別講座を開講している。2007年企画『小さいものの視座〜信州から見た「沖縄」「アイヌ」を考える』(信州沖縄塾と小宮山量平のエディターズミュージアム[共催])
現在、作家・人権教育研究家。
著書『ゆうなの花の季と』(人文書館)
  『ハンセン病を生きて──きみたちに伝えたいこと』(岩波ジュニア新書)
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