私は、こう考えるのだが。
言語社会学者の意見と実践

鈴木孝夫(慶應義塾大学名誉教授)著

ジャンル[言語社会学・文化意味論・日本語論]
2007年12月10日発行
四六判上製・204頁
定価:1,800円+税
ISBN 978-4-903174-14-3 C0037

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昏迷と漂流、そして人間の精神が弛緩し続ける
異様な時代を、どう生きるのか。

人生を正しく観、それを正しく表現するために、
「言葉の力」を取り戻す!
ときに裏がえしにした常識と直言を込めて。

鈴木孝夫の言語学と「以後と以外」
時空を超え、森羅万象を見つめる。

昏迷する世界情勢。劣化する日本と日本人。
私たちにとって、この現代とは何か。
現代をどのように観て、如何にすべきか。
私たちは、どのように生きるのか。
「人間であること」とは何か。

気高い清らかさと、風のごとき実存を見よ!

落葉松(からまつ)が鮮緑色になり、やがて紅葉して落葉する。中軽井沢の山小屋で、草木虫魚や、ムササビやコガラたちを隣人として暮らす「ことば」の人間学者であり、自然学者、そして自称「哲学者」の鈴木孝夫の、清廉で透徹したリアリズム、日々の断想!

“小鳥のこえ”と“風のこころ”と

鈴木孝夫は、慶應義塾大学医学部予科を修了した後、文学部英文学科に転入し、古英語(古代ゲルマン語)を研究する。後に、同大学言語文化研究所で、アラビア学の世界的権威・井筒俊彦の門下となり、イスラーム圏研究に従事する。その後、日本語音韻論、言語社会学、言語哲学、言語政策論などを中心に、研究と教育、旺盛な著作活動を続ける。

1年のうち、6・7カ月間は、ご夫人との山小屋ぐらしで、自然観察や読書と思索、音楽鑑賞そして物書き。その合間に「万歩」散策する。チェーン・ソー(自動式のこぎり)で丸太を切り分け、ストーヴ用の薪割りもする。まるで、ヘンリー・ディヴィッド・ソローの『森の生活』(ウォールデン)のような日々だねと微笑む。


この本に収めたものは、近年日本の社会を騒がしている様々な問題や現象が、私という一人の人間のもつ倫理観や社会観からみると、どう考えても正常とは思えないという不信不満、そしてこんなことをやっていると日本は崩壊してしまうぞという私の抱く危惧を、一切の遠慮会釈なしに機会あるごとに表明したものである。

鈴木孝夫 「本書より」

目次

第一部言語と社会──言語力を取り戻す
一 美しい日本語を作るために
二 無意味な言葉、曖昧な言葉、無力な言葉
三 私は書くことが大嫌い
第二部日本人の矜持ということ
一 日本人よ目を覚ませ──この国の美質を知るための五つの視点
二 自分は世界に一人しかいない
第三部ワレ惟ウ、故ニワレ在リ
あなたの責任でどうぞ  日本人の立場からの日本史を
NHKをどう改革するか  借金してまでものを買うな
新幹線にシートベルトを  安いことは果たして好いことか
小学校に英語なんてとんでもない  なぜタバコが悪くて酒はよいのか
もっとイスラームを知る努力を  悲惨な交通事故をなくすための妙案
「日本語教」を世界の人々に  男女別学が革新的だって?
第四部光と陰──ある文芸評論家の死
江藤淳と私
第五部複眼で──文化を生きる人間
一 子供たちに「心の母港」を──このままでは手遅れになる
二 性意識の解放は何をもたらしたか
第六部地球の悲鳴 人間の高笑い
一 リサイクルの哲学──蛇口を締めよう
二 自称「哲学者」の暴論──不況回復は目標とすべきことか
三 少子化は本当に心配すべき困ったことなのでしょうか

鈴木孝夫(すずき・たかお)


2007年8月5日 慶應義塾大学三田キャンパスにて 撮影:井上 悟/提供:慶應義塾 広報室
1926(大正15)年東京生まれ。慶應義塾大学医学部予科修了、同大学文学部英文科卒業。専門は言語社会学、文化意味論、言語政策、外国語教育。
イリノイ大学、イェール大学客員教授、ケンブリッジ大学(エマヌエル、ダウニング両校)客員フェロー、マギル大学(カナダ)イスラム研究所員などを歴任し、現在、慶應義塾大学名誉教授。趣味は、自然(鳥、花、虫など)との観察交流、廃品回収・再利用。
主な著書
『ことばと文化』『ことばと社会』『閉された言語・日本語の世界』『ことばの社会学』『ことばの人間学』『武器としてのことば』『日本人はなぜ英語ができないか』『日本人はなぜ日本を愛せないのか』『言葉のちから』『日本語と外国語』『教養としての英語学』『日本語は国際語になりうるか』『人にはどれだけの物が必要か(増補版)』『ことばと自然──子どもの未来を拓く』(共著)『鈴木孝夫著作全集』(全八巻)ほか
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