米山俊直の仕事 ローカルとグローバル
人間と文化を求めて

米山俊直(京都大学名誉教授・文化人類学者)著

ジャンル[文化人類学・地域社会学・比較文明論]
2008年4月25日発行
A5判上製・1048頁
定価:12,000円+税
ISBN 978-4-903174-15-0 C1039

[カバー装画:田主 誠]

(→画像をクリックで拡大できます)

日本と世界をどう見るのか!
[グローバル化]の時代を超えて

ムラから、マチへ、日本から世界へ、
時代から時代へ、時の回廊を旅した、
知の境界人の[野生の散文詩]

文化人類学のトップランナーによる
野外研究の民族文化誌総集。

土着の魂と国際性の結合した
卓抜な人文科学者米山俊直の
知の里程標。その永遠性の証!


米山俊直(京都大学名誉教授)
生きる仕組みと文化

 私たち人間は、ある特定の社会のなかで生活している。その社会は共通の言葉を話し、共通の価値観に裏づけられた行動様式をもって、日常生活を送っている。この価値観と行動様式を、ふつう“文化”と呼んでいる。
 ある社会はその文化の枠組みに沿って動いている。さまざまな慣習や制度が文化を基にして組み上げられていて、個人の生活史が成り立っている。人間の生きる仕組みは、この社会・文化と個人のライフサイクルの組み合わせのなかに作られているといってよい。
 ここで一口に文化といったが、じつはその内容は複雑である。……文化はさまざまな姿を見せる。現代の代表的な文化は、いわゆる“国民文化”であろう。日本人の社会は日本文化と呼ばれる国民文化を基礎にして動いている。他の国の人々も、たとえばアメリカ文化、フランス文化、中国文化などをもとにした社会で生活している。このように、現代は国家を単位にした国民文化が、各国の国民の行動様式を作り、価値観をささえている。(中略)多民族国家の場合は、“民族文化”も重要な単位になる。また地域単位の文化もあるし、人間の集団にはそれぞれの文化があるといえる。文化はそれぞれが個性を持ち、特殊性を具えているのである。

地球規模で考える

 これからの文明を考える場合には、個々の諸文明の推移を見ることも大切であるが、それらを包含する世界全体、地球規模の視点が要請されるだろう。もっとも重要な事実は、いま地球環境問題として指摘されているような二酸化炭素による地球の温暖化、フロンガスの使用によるオゾン層の破壊、硫酸化合物の大気汚染による酸性雨、森林破壊による地球生態系の破壊、海への投棄物の増加や石油タンカー事故などによる海洋汚染、などなどの環境問題が、国境を超えて地球全体の問題として出現し、深刻な状況を示している。それに対処するためには、従来の諸文明の単位で考えていては解決が不可能である。次の世代のために何をすべきか、その倫理的認識が大切になる。
(『比較文明の社会学』編著者──米山俊直・吉澤五郎、放送大学教育振興会 1997)より


目次

刊行にあたって 『米山俊直ベストセレクション』編集委員会

はじめに古川 彰(関西学院大学大学院社会学研究科教授)
松田素二(京都大学大学院文学研究科教授・社会人間学)
第I部文化の境界を超えて
1 アメリカ人を考える
2 ザイール・ノート
3 モロッコの迷宮都市フェス
第II部祝祭の伝統と創造
1 都市と祭りの人類学
2 祇園祭──都市人類学ことはじめ
3 天神祭──大阪の祭礼
第III部遠野郷に遊びたり
小盆地宇宙と日本文化

付録 米山さんの思想を解くカギ  井上忠司(甲南女子大学教授)
終わりに 文化のせめぎあいを超えて  米山俊直
編集付記 小さな解題として
あとがき  松田素二(京都大学大学院文学研究科教授・社会人間学)

米山俊直(よねやま・としなお)


[撮影:末原達郎]
1930(昭和5)年奈良県に生まれる。1954年、三重大学農学部卒業。
1956年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、米国・イリノイ大学社会人類学部大学院研究助手として文化変化の通文化的比較研究に参加し、文化人類学を学ぶ。京都大学農学部助手、甲南大学文学部助教授を経て、京都大学教授、放送大学教授、大手前大学学長を歴任。京都大学名誉教授。
2006年3月9日死去。
著書『北上の文化──新・遠野物語』(共著)『集団の生態』『日本のむらの百年』『偏見の構造』(共著)『文化人類学の考え方』『過疎社会』『アメリカ人を考える』『月の山のかなた』(翻訳)『文化の型』(翻訳)『祇園祭──都市人類学ことはじめ』『日本人の仲間意識』『生活学ことはじめ』(共著)『柳田国男の世界』(共編)『ザイール・ノート』『天神祭──大阪の祭礼』『同時代の人類学』『新・アフリカ学』『アフリカ学への招待』『ドキュメント祇園祭』(編著)『都市と祭りの人類学』『小盆地宇宙と日本文化』『アフリカ農耕民の世界観』『日本人ことはじめ物語』『いま、なぜ文化を問うのか』『クニオとクマグス』『私の比較文明論』
『米山俊直の仕事 人、ひとにあう。──むらの未来と世界の未来』
『「日本」とはなにか──文明の時間と文化の時間』(以上、人文書館)
など。

*本精選集は新刊配本致しません。ご注文いただきました書店様にのみ、返品条件付にて出荷させていただきます。
*読者の方がたは、書店様にお申し込みいただくか、直接に小社へご注文をいただければ幸いです。

先頭へ