装画:「構成」 桑江良健

島惑ひ
琉球沖縄のこと

伊波敏男(作家・人権教育研究家・長野大学客員教授)著

ジャンル[社会・沖縄近現代史・記録文学]
2013年5月15日発行
四六判上製・248頁
定価:2,500円+税
ISBN 978-4-903174-27-3 C1095

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国に惑い、島が惑う。
沖縄は何処へ行くのか。
沖縄を通して、この国の行く末を見つめる!

沖縄が本土に復帰して40年の時が過ぎた。
いったい、私たちにとって、沖縄とは、
どのような存在なのか。
そして沖縄と沖縄人にとって、「日本」とは何だったのか。

今日の沖縄の現状を指して、第二次大戦後の沖縄切り捨てに続く、
第3の琉球処分と評する人もいる。
──島津藩の琉球侵略、明治政府の琉球処分[廃藩置県]後に翻弄され、
時代の荒波の中で、不器用に、そして寡欲(かよく)に生きて来た
琉球国の高潔な士族「伊波一族」の末裔たちの生き様を描き出す。
琉球という風土性と文化性が、どのような意味を持っているのか。──

文化の島、平和の島は、何処へ行ったのか。
いま、琉球沖縄、そして沖縄人の尊厳を、
小さき者の声を伝えながら、静かに問い直す!
じぶんたちの「沖縄問題」を考えるために。

[目次]

序の章恩納岳(うんなだき)
うわぃすーこー(三十三年忌)/しぃーみぃー(清明祭)/第19ゲート
壱の章かたかしら(欹髻)
ヤマトはわが御主(うしゅ)にあらず/荒地をひらく径/水盤の諍い
弐の章士魂の残照
銀簪(ぎんかんざし)の誉/松茂良泊手(まつもらとぅまいでぃー)/
染屋真榮田(そめやまえだ)
参の章貧の闇
国頭銀行/屋取(やーどぅい)集落/年季奉公
四の章琉球の鼓動
南大東島/二人のウシ/伊豆味かわいいぐぁー(可愛い娘)/三棹の三線
伍の章そして、仏桑花(ぶっそうげ)の呻き
はるさー(農業)先生/金武湾(きんわん)/自然・平和・人権/信州沖縄塾
終の章君たちの未来へ
土に埋めた太陽/わが産土への言付け
「国に惑い」、「島が惑う」──後書きにかえて

筆者:伊波敏男(いは・としお)さんのこと

 少年の日に、ハンセン病に罹患し、沖縄愛楽園で病いの癒える時の過ぐるうちに、ハンセン病文学者の嚆矢となった北條民雄の『いのちの初夜』を世に送り出したことで知られる、作家の川端康成に出会い、美しさと哀しみを秘めるその筆力に注目される。
 以後、回復全快後に、社会復帰し、福祉事業に従事しながら、文学修行を続け、「いま、ここに、生きて在ること」の人間の尊厳と矜持を、温かく穏やかな物言いの中に強く訴えている。
 現在は、長野県上田市に居を移し、各地で息を潜めているハンセン病回復者の内なる声を手繰り寄せ、発信し続けている。その一方で、信州沖縄塾を主宰し、その塾長を務めながら、「ハンセン病問題」「人権問題」「沖縄問題」についての執筆活動、講演活動を行なっている。(人文書館編集部)

*「かぎやで風」コラム 2012年6月5日号 http://www.kagiyade.com/?p=1059

伊波敏男(いは・としお)

1943(昭和18)年沖縄県生まれ。
作家。人権教育研究家。長野大学客員教授。

東京の中央労働学院で学び、1969年、社会福祉法人東京コロニーに入所。1997(平成9)年、自らの半生の記『花に逢はん』を出版、同年12月、第18回沖縄タイムス出版文化賞を受賞。ついで、『夏椿、そして』を著し、ハンセン病文学を問い続ける。2004(平成16)年より、信州沖縄塾を主宰し、塾長となる。以降、沖縄の近現代史を基礎から学ぶ特別講座を開講している。

2007(平成19)年、伊波基金日本委員会設立。

著書
『ゆうなの花の季と』(人文書館、2007年5月)
『ハンセン病を生きて──きみたちに伝えたいこと』(岩波ジュニア新書、2007年8月)
『花に逢はん[改訂新版]』(人文書館、2007年9月)

2011年10月に琉球朝日放送で放送された、伊波敏男の半生を描いたドキュメンタリー「花に逢はん」が、テレビ朝日系列プログレス賞最優秀賞を2012年10月に受賞。

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