大城貞俊作品集【上】
島影
慶良間や見いゆしが
ジャンル[小説・戦後史・沖縄論・人文学]2013年12月10日発行
四六判上製・304頁
定価:2,600円+税
ISBN 978-4-903174-28-0 C1093
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島が見えるか/太陽に対峙して輝く島
月の光を受けて歴史を刻む島
その時を信じて/あるがままにある
沖縄(ウチナー)の島影 (巻頭詩/部分)
沖縄に生き、沖縄を生きるということ。
──表現者は、たぶん、だれでもが、なぜ書くのか。なぜ自らの作品を出版するのかを自明のこととせずに問い続けているはずだ。
私の場合は、沖縄で生まれ、沖縄で生きていることと深い関わりがあるように思う。沖縄の地は、去る大戦で地上戦が行われ、兵士だけでなく、県民の三分の一ほどが犠牲になった。戦後も、米軍政府の統治下に置かれ、様々な辛酸を嘗めてきた。戦争という体験は、土地の精霊をも巻き込み、今日までも、人々の生き方を規制している大きな要因の一つになっている。
沖縄の現在を考えれば考えるほど、この戦争体験を抜きにすることは出来ない。沖縄の人々の生き方を凝視すればするほど、死者を忘れない土地の特質に出会う。虐げられ、苦しめられ、哀しみの極致にいてもなお、死者との再生とも喩えるべき優しさを有している。私は私が生まれ育ったこの土地に、畏敬の念を感じると同時に大きな魅力を感じている。考えてみると、このことは、私が生き続けることの要因の一つにもなっている。──
島が揺れている。
海って、病院なんだね、きっと……。
[目 次]
巻頭詩/慶良間や見いゆしが/彼岸からの声/パラオの青い空/ペットの葬儀屋
[解説]萩野敦子(琉球大学教授。日本文学)
大城貞俊(おおしろ・さだとし)
1949年 沖縄県大宜味村生まれ。
1973年 琉球大学法文学部国語国文学科卒業。
県立高校教諭、県教育庁県立学校教育課指導主事等を経て、現在、琉球大学教授。
沖縄タイムス芸術選賞文学部門(小説)大賞受賞、沖縄タイムス教育賞受賞。
主な著書
詩集『夢・夢夢(ぼうぼう)街道』、評論『沖縄・戦後詩人論』『沖縄・戦後詩史』、小説『椎の川』(具志川市文学賞)、『山のサバニ』(戯曲「山のサバニ〜ヤンバル・パルチザン伝」第1回沖縄市戯曲大賞)、「サーンド・クラッシュ」(九州芸術祭文学賞佳作)、詩集『或いは取るに足りない小さな物語』(第28回山之口貘賞)、小説『記憶から記憶へ』、『アトムたちの空』(第2回文の京文芸賞)、『運転代行人』、『ウマーク日記』、『G米軍野戦病院跡辺り』(人文書館)ほか。