耳を澄まして 音風景の社会学/人間学
聖シュテファン寺院の音/巴里/旅すること/人間・身体/環境・世界/感性と想像力/音楽と絵画/時間の神/祈りの言葉

山岸健(慶應義塾大学名誉教授・大妻女子大学名誉教授)著
山岸美穂(元作新学院大学人間文化学部助教授)著

ジャンル[哲学・社会学・環境学・風景学・随想]
2016年6月15日発行
四六判上製・280頁
定価:3,500円+税
ISBN 978-4-903174-34-1 C1036

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われもまたアルカディアに!
人生をどのように方向づけていくか。
平和郷をもとめて
音の風景を旅する、人生を旅する。

花の宇宙に入り、生のありようを見詰める。
この春も真赤な色彩のアネモネが一輪、久しぶりにその姿を見せていた。
今年になって花屋で求めたアネモネをなんと数多く描いてきたことだろう。
線描のあとで水彩で画面を彩る。描きながら花の宇宙に入り、花と交わる。
花言葉に心を研ぎ澄ます。(本文より)

山岸健は、パリ郊外ジヴェルニーへの絵画的旅を想起しながら、記憶とは過去の現実的現在であり、未来であるという。目の記憶や耳の記憶、風景の記憶があり、人間と人間との出会いと触れ合い、交わりの記憶があり、誰にも別れの記憶があるだろう、という。多様な世界体験と記憶のなかで、自分自身の拠り所を求めながら、体験や記憶によって支えられたり、導かれたり、意味づけられ、方向づけられたりしながら、〈日常的世界〉〈レーベンスベルト 生活世界〉で、日々の生活の舞台で、生きているのではないだろうか、と説く。アルフレッド・シュッツやオーギュスト・コントらの日常性の社会学やフッサール、メルロ=ポンティ、ハイデッガー等の現象学的哲学をふまえて、人間とは何か、人生とは何かを問いつづける。

共著者・山岸美穂は、身近にあった音の世界からその地平線を広げ、音の風景論を切り拓いた。気鋭の感性行動学者として、五感に訴える音を捉え、現出される環境との対話は、詩神[ミューズ]への祈りでもあった。本書は、両者の対話によって成立した小論集(エセー)である。美しい文章のなかに、ふたりの瑞々しい感性が感じられるであろう。

[目次]

序にかえてミレーの「晩鐘」と音風景(サウンドスケープ)、そして思い出の書物に。
第Ⅰ部ウィーン・シュテファン大聖堂の音──抒情と思索
第Ⅱ部秋の木の葉に、風が来(きた)って──パリの遊歩街と人びと
第Ⅲ部天空のしたに、大地のうえに、詩人的に人間は住む──人間の世界体験と人間の主体性(アイデンティティ)
第Ⅳ部耳を澄まして──風のサウンドスケープ
結びに言葉の花束 あなたの生活の音がビューティフルでありますように。

山岸 健(やまぎし・たけし)

慶應義塾大学名誉教授、大妻女子大学名誉教授。社会学博士。
研究領域:社会学の理論と学説、社会学的人間学、日常生活の社会学、芸術社会学、都市社会学、風景論、感性行動学、生活空間論。

主著『レオナルド・ダ・ヴィンチ考』『日常生活の社会学』『風景とはなにか』『絵画を見るということ』(以上、NHKブックス)、『風の花と日時計──人間学的に』(人文書館)。

山岸 美穂(やまぎし・みほ)

元作新学院大学人間文化学部助教授。
研究領域:社会学、感性行動学、サウンドスケープ研究、日常生活の社会学、環境社会学、文化社会学、音楽社会学、生活空間論。

主著『音 音楽 音風景と日常生活』(慶應義塾大学出版会)、山岸健との共著に、『音の風景とは何か』(NHKブックス)。

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