題字:石飛博光
装本:荒田秀也

漢とは何か、中華とは何か

後藤多聞(元NHKテレビ・ディレクター、平山郁夫美術館理事)著

ジャンル[中国社会文化史]
2017年4月20日
四六判上製・416頁
定価:4,800円+税
ISBN 978-4-903174-36-5 C1022

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 中国共産党の習近平(シーチンピン)総書記は、2012年11月の国家主席就任演説で言う。──5千年余りの文明発展のなかで、中華民族は人類文明の進歩に不滅の貢献をした。近代以降は苦難を経験し、中華民族は最も危険なときに至った。私たちの責任は、党と全国の民族と人民を団結させ、中華民族の偉大な復興を実現させることだ。──
 習近平氏の発した「中華民族」、そして「中華の復興」とは、いったい何なのか。
 二十年前、テレビ・ドキュメンタリスト後藤多聞は、NHKスペシャル「故宮~至宝の語る中華五千年」の番組制作に取り組んだ。かねて番組制作へのアドバイスをしていただいていた歴史文学者の司馬遼太郎さんは、静かに助言をした。「漢とは何か、中華とは何か」という視点を絶えず念頭におくように、と。その視点は司馬さんの友人陳舜臣さんの発言と軌を一にしたものであった。それらの見識は「故宮」に反映され、中国・台湾双方の識者の認めるところともなった。
 以来、多民族国家・中国に於ける漢民族、あるいは漢民族意識、中華意識の成立過程を探る「司馬さんからの宿題」に、長い時を経て、ようやくにして答えを見出す。
 それは「塞外(さいがい)の民」「五胡(ごこ)」と呼ばれた騎馬遊牧民族をたどることによって得られるもう一つの中国の歴史を「みる眼」でもあった。その長かった探究の道程をスリリングに物語りながら、ユーラシア史・中国史研究の一つの到達点を示してゆく。
 その運筆の生彩に、読者は知的昂奮をさえ覚えるであろう。畢生の労作誕生である。

[目次]

序 章「中華」の不思議──「中華」と「漢」
第一章騎馬民族 跳梁(ちょうりょう)──大河小説のような
第二章虹へ 若武者の野望・氐族(ていぞく)符堅(ふけん)
──氐(てい)、胡(こ)ならず
第三章知られざる大仏の道──巨大仏はどこで生まれたのか
第四章草原からの若い風 拓跋(たくばつ)一代記──「皇帝即如来」から「中華」へ
第五章虹をつかんだ青年 孝文帝(こうぶんてい)──「中華」帝国誕生
第六章周隋唐、武川に出ず──拓跋国家の系譜
第七章虹よ 永久(とわ)に──志を継ぐもの
終 章亡国と革命 ──歴史のなかの「中華」、そして現在

後藤多聞(ごとう・たもん)


司馬遼太郎氏とともにウランバートルにて
撮影:伊藤貴和子

1944(昭和19)年、大阪市生まれ。
京都大学大学院中国文学研究科修士課程修了。NHKに入局。主として歴史番組やアジアを中心とした海外取材番組を担当。現在、平山郁夫シルクロード美術館理事(国立民族学博物館客員教授、総合地球環境学研究所客員教授などを歴任)。

主な担当番組
NHK特集「ビルマ2000キロ」「秘境ブータン」「秘境雲南」「幻の民ピートンルアン~タイ」「大黄河」「大草原の祭り~モンゴル」ほか。NHKスペシャル「よみがえる邪馬台国」「騎馬民族の道はるか~北朝鮮歴史紀行」「謎の仮面王国~三星堆遺跡は何を物語るか」「ベルリン美術館」「故宮~至宝が語る中華五千年」など。

主な著書
『遙かなるブータン』(元本は、NHK出版、その後は、ちくま学芸文庫)、『大黄河』『騎馬民族の道はるか』(共著)、『ふたつの故宮』(上・下)(いずれもNHK出版)。

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