増補復刻版
イラン人の心 詩の国に愛を込めて
ジャンル[エッセイ・文学]2020年11月10日発行
四六判並製・264頁予定
定価:2,500円+税
ISBN 978-4-903174-43-3 C1098
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【比較文明・比較文化への眼差し】
ペルシア文学の泰斗、イラン学先導者の名著が甦る!
大地に伏して全能の神に祈り、詩と雄弁を愛し、
灼熱の砂漠に生まれた神秘主義に陶酔する。
達意の筆で、内なるイランを開示する。
(第30回《1982年》日本エッセイストクラブ賞受賞)
「妖精の現身(うつしみ)なる乙女は 月をも凌ぐ美しさ
ベールのしたに冠いただく美貌はほのかに映える新月か
黒き瞳は 闇の底の生命の水さながら……」
「あの甘美な泉──彼女の羚羊の眼をみては
いかな尚武の士も気を失うほど
頬も野バラ、その香も野バラ
くちびるは甘美(シーリーン)で その名もシーリーン
甘美な言葉を語る唇は 蜂蜜と呼ばれて……」
(岡田恵美子訳・本文より)
感想──
「開け、胡麻!」の代りに、テヘラン空港での「サラーム」が、
著者がイラン文化の宝庫に入る呪文となった。
青春時代の四年間、かの地の大学でペルシア文学を専攻し、
邦人女性として最初の博士号を得るまでの体験記であり、
随所に美しい訳詩もちりばめてある。
年中行事や、地方都市や大砂漠への旅、学界や市井の人々への
鋭いが温かい観察などを通じて、文化の奥深さを探っている。
チャードルの蔭の明眸にも譬えたい本である。
前嶋信次(慶應義塾大学名誉教授/1981年当時)
[目次]
はじめに──心と心には道がある(『イラン人の心』復刻版にあたり) | |
はじめに(初版・1981年)・(新装版・1993年) | |
第一章 | サラーム |
---|---|
第二章 | 陶酔境 |
第三章 | 廻(めぐ)る天輪 |
第四章 | イラン人の生活 |
第五章 | 聖域 |
初版あとがき(1981年) | |
新装版によせて(1993年) | |
おわりに──増補復刻版のためのあとがき |
*カラー口絵 ペルシア細密画「花の乙女」収載
岡田恵美子(おかだ・えみこ)
中央大学総合政策学部教授/当時
1932年、東京生まれ。1967年、テヘラン大学文学部博士課程修了。文学博士。専攻は、ペルシア文学。東京外国語大学教授、中央大学総合政策学部教授を経て、現在、日本イラン文化交流協会会長。
主な著書
『イラン人の心』(NHKブックス)、『ペルシアの神話 光と闇とのたたかい』(筑摩書房)、『隣のイラン人』(平凡社)、『言葉の国イランと私 世界一お喋り上手な人たち』(平凡社)、他に、『ロマネスク二人旅』(岡田直次との共著、筑摩書房)などがある。
主な訳書
『王書 古代ペルシャの神話・伝説』(岩波文庫)、『ルバーイヤート』(平凡社ライブラリー)、『ヴィースとラーミーン ペルシアの恋の物語』(平凡社)、『ホスローとシーリーン』『ライラとマジュヌーン』『ユースフとズライハ』(以上、平凡社東洋文庫)、他に、『西アジアの神話』(岡田直次との共編著、ポプラ社)などがある。