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「漢とは何か、中華とは何か」に関するレビュー

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中国とは何か~見事な文明論的アプローチ

 私は『文明の交流史観』(ミネルヴァ書房刊)以来、中国文明は草原の道、オアシス路、青海ルート、南海路など様々の“道”から流入してきた文化の混合と融合、統合によって、特に秦漢帝国以後に次第に作られてきた融合文明だと考えてきています。
 そして、そこでその統合に大きな役割を果してきたのが何度も北方から中原を征服した騎馬遊牧民族だったと思ってきました。そのことが今回の後藤多聞氏のライフワークでも“中華”の成立という観点から見事に跡づけられていて、「わが意を得たり」という思いでした。
 後藤氏の海外取材番組はよく拝見して参りましたし、ビデオなども教材に使わせていただいてきましたので親近感をもってお仕事ぶりを拝見して参りました。
 この度、長年の課題に取組まれた著書を出されたことは慶賀に堪えません。中国哲学でも中国文学でも中国史でもやっておられます方は多いが、それぞれの専門に集中していて、本書の主題である中国とは何かといった大きな文明論的問題には意外と無関心。そこをNHKディレクターならではの実体験に裏付けられたアプローチをされたところに大きな意味があると思います。読みごたえのある本を久々に読んだ感じです。

小林道憲(こばやし・みちのり。哲学、文明論。元福井大学教授。著書に、「著作集〈生命(いのち)の哲学〉コレクション」全10巻(ミネルヴァ書房)など)

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